あの子の好きな子

プラネタリウム




【プラネタリウム】



理科総合B。クリアファイルに挟んだ時間割表の理科Bのところには、星のシールが貼ってある。スケジュール帳に付属した、小さなオレンジ色の星シール。本当はハートを貼ろうとしたけど、ちょっと恥ずかしくてやめた。

「ここのね。まるとしわって、何ですか?」
「まるとしわは、まるとしわだよ。メンデルの法則の」
「だから、まるって何が?しわって、あのしわ?」

放課後、地学準備室に行くと先生がいた。だいたい60%くらいの確率で先生はここにいて、そうじゃない時は職員室か1年C組の教室。私は授業でわからないことがあると言っては毎日のようにこの地学準備室に通っていた。職員室は広くて先生たちがいっぱいいるけど、この地学準備室は中教室よりも狭くて、いるのはたくさんの資料と先生だけ。私はこの場所で先生と話すのが何よりも好きだった。

「しわは、あのしわだよ」
「シャツとかにできる、あのしわ?」
「そうだよ」
「まるは、丸いってこと?」
「そうだよ」
「・・・丸くてしわしわってどういうことですか?」
「エンドウ豆の実験でね。つるつるの豆がまる。しわしわの豆をしわって呼んだんだ」
「あ。なんだ、エンドウ豆のことなんだ・・・」

先生は正直、教えるのが上手じゃないと思う。一を聞いたら十を教えてほしい時でも、一か二くらいしか返ってこない。もともと理数系が苦手な私は先生の授業が難しくて仕方ないけど、先生が穏やかに話す姿を見ているのは好きだった。クラスで嫌なことがあった日も、ここに来て先生のいつものぼさぼさ頭を見てのんびりした話を聞くとほっとした。



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