夫婦ごっこ
忙しかった……。ランチは近くの会社の人たちや
奥さまたちの井戸端会議もあって
小さな店は すぐに満員になった。

だいたいが常連のようで
食事を出してから忙しい時間は四十分で帰ってくださいという
高飛車なルールがあるようで
回転がめっちゃ早かった。

私は夢中でその中を水を持って 注文とって
運んで 片づけて……

走りまわっている。

「新しい子かい?」

ユニフォームのエプロンには店の名前が
デザインされていて

SIGEMIMI

と書かれた真っ赤なエプロンに
ベニーと書かれたネームプレート

頭にも私は紅だからといって真っ赤なバンダナを巻いてくれた。


「ベニーこっち注文とってないよ。」

常連さんたちから声をかけられる始末……。


無我夢中のランチタイム


やっと落ち着いたのは一時半だった。

「おつかれさま~~大変だったでしょ?
土日は孫が手伝ってくれるんだけどね
平日はシゲちゃんがホールだから…もう大変だったのよ。」

「いえ…私だってもう…力不足で…。」

「シゲちゃんより百倍よかったわよ。」

ランチタイムが終わった二時半には
一度店を閉めて 昼食に
本日のランチを食べさせてくれるのを知って
私は嬉しくて悲鳴をあげた。

「あ~~美味しい~~。こんなに
美味しいご飯は生れて初めてです。」

優しい笑顔のミミちゃんがシゲちゃんの入れた
コーヒーを持ってきてくれた。
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