夫婦ごっこ
「恒くんならいいよ。」私はテレビ塔から落ちる気持ちだった。

「え?」そんな困った顔しないでよ……。

「恒くんなら……私を襲っていいよ。」

「バカなこと言うなよ。俺ら別れるんだぞ。
なんでそんなこと…しなきゃならない?相手間違ってる。」

とても怒った声に変わった。


「そうだよ 別れるんだよ。契約解消 お互い自由の身…。
だけど……うち…最後に恒くんに抱いてもらいたい。」

勇気を三十年分使った台詞だった。


「紅・・・・酔ってんのか?」

「酔わないと…言えないから…ワイン飲んだ。」

「そんなことしたら後が残るだろう?」

「恒くんは残さないでいいから……
うち最後に抱かれたいの……。恒くんに愛してもらいたい。」


お願い・・・・・
それ以上 拒絶しないで・・・・
もう今でも 心が壊れかけているの……。


「酔っ払い。頭冷やせよ。」

恒くんが部屋を出て行った。


  え・・・・・・・なんで


そんなにうちのこと嫌いなの?
思い出残しちゃダメなの?


心が砕け落ちた。


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