夫婦ごっこ
ベビーのものは私の心を躍らせる。

「こんなに小さいんだ~~。
可愛い~~あ~~これ見て 恒くん~~。」

前さんのお祝いを選ぶまえに私は興奮しまくった。

自分のベイビーが産まれたら……
こんなの着せたい
あんなの買ってあげたい……

「おい 紅波 まずは前んとこの決めようよ。」

恒くんが少し呆れたように言った。
結局ベテランおかあさんって感じの店員にアドバイスしてもらって
ちょうど夏頃着れる柔らかいベビー服を数点選んだ。

  いいな 千鶴さん……

  幸せなんだろうな。


配送を頼むのに 恒くんがカウンターに行ったから
私はまた 商品を見ながら

自分のお腹を撫ぜる。


着せてあげられるの?
ちゃんと…産んで…育てられる?


一人でも?

絶望的に無理なのは いくら私がバカでも
簡単にわかることだった。


恒くんとのベイビー……
この世界で一番愛してる人に抱かれた日に
私のお腹に宿るなんて……

なんて素敵なプレゼントで……

なんて難しい問題なんだろう……。


新生児用の肌着を手にとって 心は落ち込んで行く。
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