夫婦ごっこ
「素直になるって俺には一番難しいことだったんだ。
だからずっとこうやって紅波を傷つけて……。」

「そんなことないよ……。
私がいけないんだよ。お仕事の足ひっぱって…
恒くんの一番大切な場所を汚してしまって……
だから…だから自信がなくなったの。
理想の奥さんは難しいの。
ご飯作りたくない時も 洗濯物面倒な時も
お風呂に毎日入りたくない時もあるし
お化粧したくない朝もある。
だけど…だけど うち 恒くんに嫌われるのが怖くて
たくさん無理してきたから……
疲れちゃったんだ……。
うちは恒くんに 何もしてあげられないもん。」


今度は私が悲しくなって絶叫した。


恒くんが私の頬を大きな手で挟んだ。

「やだ…顔見ないで……。」
泣き過ぎて 鼻水が出てきた。


「愛してる…愛してる…鼻水垂れてる紅波も…
すっぴんの紅波も 具合悪くておきてこれない紅波も…
全部全部 俺には必要なんだ。
疲れたなんて言わないで……。
俺のそばで笑ってくれたらいい……。
どこにも行かないで……。」


恒くんも涙と鼻水で顔がくしょぐしょだった。

「ちたない……よ…。」

私はその顔めがけてキスをした。


「愛してる…恒くんをもっともっと知りたい。」

私たちはなんだかめちゃしょっぱい
長いキスをしながら

「愛してる。」って言い合った。
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