夫婦ごっこ
「もしかして…悪い病気なのか?」

血を吐いたことで恒くんはパニックになっている。
私はその答えに迷っていると

恒くんが泣きだした。

「恒くん・・・・?」

そして恒くんは私を強く抱きしめて

「俺を…俺を一人にしないで……。」そう声を震わせる。

「あ……あの……。」

「俺 もう紅波がいない生活なんて考えられない。
早くちゃんと伝えたいって…俺
だけどどう伝えていいのか…どう言ったら信じてもらえるのか…
俺 紅波にひどいこと散々してきて……
夫婦ごっこ始めてからの自分を振り返って…
ひどい仕打ちを罪のない紅波にしてきたんだって……
後悔して後悔して……。」


恒くんの胸に抱きしめられて私は
スーッと落ち着いて行く。


「ビオンのこと…ごめん。
誤解しててごめん。俺自身が一人何にも知らないで
紅波の気持ちも知らないで……かっこつけて
自由になれなんて言ったけど……本当は…本当は
かっこつけただけで…そう契約した手前後にひけなくなった。
俺…紅波をいつしか……愛し始めていた。
他の女にうつつぬかして ふざけたこと
言うなって思われても……
なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう。」


恒くんの言葉はもう完全に泣き声になっていた。


  恒くんが 泣いてる……。

「紅波を……失いたくない……。
そうちゃんと自分の心を伝えればいいだけなのに
素直になれば……こんなに簡単なことだったのに……
かっこつけててごめん。」


恒くんの涙が私の頬を濡らす。
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