まだ、君を愛してる.doc
「ここでいいかな?」
だから、さっきから言っている。疑問形は命令形だと、何度言えばわかるのだ。と心の中で叫んだところで、状況が改善する訳でもない。
「あ、はい。角田部長のオススメなら、僕はどこでも構いません。」
「そうですか。いや、でも、本当にオススメだから。びっくりするよ。」
「と言うと?」
「かわいい娘ばかりなんだよ、ここは。」
ちょっとバカにしていたところがあったかも知れない。地方にかわいい娘のいるキャバクラなんて、あるとは思っていなかった。それだけに中に入った時の衝撃は相当だった。
「すごっ・・・」
その一言に尽きる。それがすべてだ。
右にいる娘、左にいる娘、奥にいる娘、どの娘をとっても魅力的だ。タイプはそれぞれ違うが、それぞれが自身の魅力的な部分について理解しており、東京のキャバクラよりもはるかにレベルが高い。ケバいだけじゃない男心をくすぐるものを、ここは兼ね備えているのだ。
「そうだろう?」
人の良さそうな顔をして、角田部長は相当のスケベらしい。いや、角田部長に限らず、男とはそう言うものであるが、さっきまでの会社の表情と今のこの笑み、それを比較すると、とても同一人物には見えない。
「あ、角ちゃん、いらっしゃい。」
一人の女が手を振ってきた。
“角ちゃんって・・・”
やや呆れるが、それを顔に出すような事はしない。ただ言えるのは、“角ちゃん”と呼ばれるくらいに、この店に来ていると言う事実、それは顔に出ていた。
「ん?」
「角ちゃんって言うのは、角田部長の事ですか?」
気づかれてしまってはしょうがない。素直に聞いてみた。
「そうだよ。ここにはお気に入りがいてね・・・」
自分の好みだとかを話し始めたが、そんなどうでもいい話に耳を傾けてはいられない。右から左へと言葉は抜けていく。それにそうなった理由は、もう一つあったのだ。
「みり・・・さん?」
「あ・・・」
僕の声に気がついた。
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