366日の奇跡
とにかく走って走って走り続けて…―視界に入ったのは懐かしい公園だった。ここは、母さんの記憶がわずかにある唯一の場所で親父と3人で来た事がある。
「まだあったんだ…」
遊具も少なくて確か砂場でひたすら遊んでから次は…―とキョロキョロ見回して胸が弾んだ。
それは、土管。ブランコや滑り台が公園にあるのは当たり前だけどここは大きな土管があって中に入っては出るという今、思えば何が楽しいのかわからない遊びをしていたのを思い出した。
少しだけ中に入ってみる。
「あれ?こんなに狭かったかな?…基地みたいにして遊んでたのにな〜」
もう、何十年も経てばあたしの体は大きくなって土管が狭くなるのは当たり前の話で。その場に座り込んでハァと溜め息をついた。
「……どうしよっかな」
行くべきなのかな?友達に聞いたところで心配かけるだけだから聞けないし…でも他に行く所なんてどこにもない。
母さんの親戚なんて知らないし、ましてや親父の親戚も兄弟がいるかどうかも分からない。
「親父…どこに行っちゃったのよ…」
膝を抱えた時、ふと思い付いた。寒さをしのげて眠れる場所…―
「……この土管なら」
眠れるんじゃないの?2、3日は大丈夫かも知れない。何だかひらめいてしまって嬉しくなった。
