366日の奇跡
冬が近づくと陽が落ちるのは早い。バイト帰りもそんなのは当たり前で普通と言うか何にも思わなかったのに…―今は違う。
薄暗い蛍光灯だけが頼りのような言い様のない不安に襲われて走る夜道は怖いだけだった。

「ハァハァ…」

何度も何度も後ろを振り返りながら走る。今までこんなに必死に走った事なんかないぐらいひたすら走った。

住宅街から聞こえる笑い声や晩御飯の匂いテレビの音…―
寂しさと不安が一気に込み上げてる。走るのを止めて歩き始めた途端、涙が溢れてしまった。

「グス……何で…こんな事…」

理由もわからず逃げるあたしを匿ってくれる人なんか脳みそフル回転させたっていない。
親戚に会った事もないし親父が親しい人と会ったりしていたのも見た事なんかない。

ふいに座り込んで空を見上げてみた。冬の冷たい空気で星は都会でも見える事を知った。
吐く息は白くて指先はかじかんでいる。

「どうすればいいんだろ…親父の言う人に会いに行った方がいいのかな…でも…もしも…」

その人がいい人じゃなかったら?あたしはどうなるのかな?

手の中にあるメモをぎゅっと握りしめた。
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