パラドックスガール
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雨の中、僕は走ることなく羽田野家に向かう。
髪が徐々に顔にくっついてくる。



『お前らそんなに仲良かったっけ?』



兄さんの言葉が反芻した。
そう聞かれると、「うん」とは言えない。
答えるならば、「普通」。
兄さんの親友の妹で、言うならばただの知り合い。
それだけの存在だった彼女が特別になったのも、こんな雨の日だった。










僕らが小学校4年生、兄さんたちが21歳の時だった。
いつものように兄さんと羽田野家に向かった。
この時の僕は兄さんが大好きで、何より大切で、一番だった。
頭良いし、運動神経抜群だし、見た目はかっこいいし。
すごく自慢な兄さんだった。


「玲央、めーちゃんと遊んでて」


兄さんは羽田野家に着くと、決まって銀の部屋に直行。
僕は茗子と取り残される。
はっきり言って不愉快だった。



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