パラドックスガール
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「…え、えっと…」


今度はあたしが慌てる番だった。
急な告白と周囲からの痛い程の注目、おまけに今は朝ということで、頭が働かない。


「茗子」


市橋君の向こうから名前を呼ばれた。
視界に入ったのは、珍しく眼鏡をかけていない玲央。
女子生徒たちは玲央の登場に小さく黄色い声を上げた。


「や、あの」


「行こ」


玲央は少し低めの声でそう言い、あたしの左手を引いて歩き出した。


「ちょ、玲央」


「いいから」


有無を言わさない玲央の言葉に、少し驚く。
離してはくれなさそうなので、引っ張られながらついていった。



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