パラドックスガール
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「じゃあ茗子ちゃん、私委員会行きますね」


「うん、ありがと。ばいばい」


珠希が申し訳なさそうに教室を出ていった。
前のことがあったから、余計心配らしい。
でも、迷惑はかけたくないから笑ってみせた。
が、あたしが笑ったことに驚いて、「頭打った?!」なんて言われる始末だったけど。


「そんなに珍しいかあたしが笑うと。」


窓の前の、花瓶とか置くスペースに体操座りで収まってみる。
少しだけ、誰もいない教室で愚痴ってみた。
密着する壁が気持ちよくて、そのまま外に目をやる。
校門に溜まる生徒や、自転車をこぐ生徒が見えた。


「…いーなぁ…」


無意識に呟いたのは、羨望の滲む言葉。
あたしがこんなんじゃなくてみんなみたいだったら、ああやって笑ってたのかな。
あたしがみんなみたいだったら、玲央とちゃんと向き合えるのかな。


「…バカだなあたし」


曲げた膝を体に寄せ、顔を伏せる。
どんなに羨ましがったって、あたしはあたしなのに。


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