恋は嘘から始まる。
「わ…分かった……」
私がそう言ったら彼は
勝ち誇った様に笑って
「じゃー決まりな。お前、約束は守れよ(笑)」
そんな事を言った。
本当にこいつは何処までも偉そうな奴だ。
「じゃ。またな」
「あっ…うん…」
目の前に居た彼は
スッと立ち上がって
何事も無かったかの様にして
歩いて行った。
……って、ちょっと待ってよ?
よく考えたら私
あいつに名前聞いて無くない?
「ちょっとっ!!」
「えっ?」
私がそう叫んだら
彼はちょっと驚いた様に後ろを向いた。
「名前っ!!」
「名前?」
「あんた、名前何て言うの!?」
そう言うと彼は
「何で、言わなきゃ駄目なの?」
と言って来た。
何でって……
「あんたの事何て呼べば良いか分からないからっ!!」
そう言うと彼は少し笑って
「田原 壱斗」
とだけ言ってまた歩いて行った。