あくまで天使です。


月緋は時計台の下でたたずんでいた。


白いチュニックの上に、柔らかいピンクのカーディガンをはおっている。


ふわふわとした彼女の笑顔にぴったりだ、と数メートル離れて双眼鏡を覗き込みながら私は思った。


ぴぴっとポケットの中で音がしたので、私は彼女から目を離さずケータイ電話を取り出した。


『あーこちらべリアルー。まだ彼氏とやらはきちゃいねぇみてぇだな』


だるそうに報告したべリアルに、ふむっと頷く。


べリアルには羽があるので、空からの監視をしてもらっている。


ちゃんと人間には見えない魔法をやらを掛けているようで、たまに空を見上げる人間げいても、浮いている真っ黒な天使には気づかないだろう。


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