あくまで天使です。


いち早く声のしたほう、私の背後を振り返った。


背の高い黒コートが月明かりに揺れる。顔の半分が反射してしまい、こちらからはうかがえない。


だが、顔を上げてくれたおかげで片目が見えた。艶のある黒だ。


白い歯を自慢するように剥き、小馬鹿にするような微笑み。


「俺がお前を幸せにしてやるよ」


ありがたく思え、と言う前にその広く大きな胸に飛び込んで行った。


貴方がいるから私は幸せになれるんだ。


あんたは悪魔みたいだけど、私にとっては幸せを運ぶ天使そのものだよ、とはっきり言えるのはまだまだ先になるだろう。


素直になるまで待っていてくれるはずだ。だってあいつは


私だけの悪魔で天使だから。


END


< 606 / 625 >

この作品をシェア

pagetop