カエルと魔女の花嫁探し
カエルがしゅんとうなだれ、重く湿った空気を漂わせ始める。
そんなに陰気にされると、こっちも滅入っちゃうじゃない。旅はまだ始まったばかりだっていうのに。
セレネーはわざと朗らかな声で話しかけた。
「落ち込まないでよ、ちょっと条件下げればいいだけの話じゃない。お姫様じゃなくても、カエルの王子を愛してくれそうな乙女を見つけなくちゃ」
話をしている内に、二人は北の国で一番大きな都にたどり着く。
セレネーは都の中央で滞空すると、ポケットから水晶球を取り出し、眼下に広がる賑わいに向ける。
肩越しにカエルが水晶球を覗いた。
「セレネーさん、なにをしているのですか?」
「足で探してたら時間かかっちゃうから、この水晶球で探すの――クリスタルよ、この国でカエルにキスしてくれそうな、気立てのいい娘を教えておくれ」
セレネーが囁きかけると、水晶球はほんのり薄紅色に光り、一人の少女を映す。
そこには食堂の看板娘と思われる少女が、昼時の忙しさに汗水を流し、懸命に働く姿があった。
同じ給仕の娘にジーナと呼ばれ、少女は快活な声で返事をしていた。
やや釣り上がった目は勝気そうだが、整った顔をしている。
愛想はよく、接客の物腰も丁寧だ。仕事仲間に対しても心配りができている。
親や弟妹を大切にしているようで、家事も喜んでやっているようだった。
「良さそうな娘じゃない。どうかしら、王子?」
「ああ、こんな方を妃にする事ができれば、きっと民にも心を砕いてくれるでしょう」
夢見心地なカエルの声を聞き、セレネーはわずかに片眉を上げる。
そんなに浮かれていたら、思わずボロが出て失敗するかもしれないでしょうが。
でも、せっかくやる気を出しているんだから、水は差さないほうがいいわね、
セレネーはあれこれ言い合い気持ちをグッと堪え、話を続けた。
「じゃあこの娘の所に連れて行ってあげるわ。でも、ちょっと夜になるまで待ってね」
「夜に? どうしてですか?」
「こういうのは雰囲気も大切なのよ。アタシに任せて、あの娘がカエルを受け入れやすくなるために演出するから」
そう言うとセレネーは、一度都の端へ行ってホウキを降りると、時間つぶしのために街へと繰り出した。
そんなに陰気にされると、こっちも滅入っちゃうじゃない。旅はまだ始まったばかりだっていうのに。
セレネーはわざと朗らかな声で話しかけた。
「落ち込まないでよ、ちょっと条件下げればいいだけの話じゃない。お姫様じゃなくても、カエルの王子を愛してくれそうな乙女を見つけなくちゃ」
話をしている内に、二人は北の国で一番大きな都にたどり着く。
セレネーは都の中央で滞空すると、ポケットから水晶球を取り出し、眼下に広がる賑わいに向ける。
肩越しにカエルが水晶球を覗いた。
「セレネーさん、なにをしているのですか?」
「足で探してたら時間かかっちゃうから、この水晶球で探すの――クリスタルよ、この国でカエルにキスしてくれそうな、気立てのいい娘を教えておくれ」
セレネーが囁きかけると、水晶球はほんのり薄紅色に光り、一人の少女を映す。
そこには食堂の看板娘と思われる少女が、昼時の忙しさに汗水を流し、懸命に働く姿があった。
同じ給仕の娘にジーナと呼ばれ、少女は快活な声で返事をしていた。
やや釣り上がった目は勝気そうだが、整った顔をしている。
愛想はよく、接客の物腰も丁寧だ。仕事仲間に対しても心配りができている。
親や弟妹を大切にしているようで、家事も喜んでやっているようだった。
「良さそうな娘じゃない。どうかしら、王子?」
「ああ、こんな方を妃にする事ができれば、きっと民にも心を砕いてくれるでしょう」
夢見心地なカエルの声を聞き、セレネーはわずかに片眉を上げる。
そんなに浮かれていたら、思わずボロが出て失敗するかもしれないでしょうが。
でも、せっかくやる気を出しているんだから、水は差さないほうがいいわね、
セレネーはあれこれ言い合い気持ちをグッと堪え、話を続けた。
「じゃあこの娘の所に連れて行ってあげるわ。でも、ちょっと夜になるまで待ってね」
「夜に? どうしてですか?」
「こういうのは雰囲気も大切なのよ。アタシに任せて、あの娘がカエルを受け入れやすくなるために演出するから」
そう言うとセレネーは、一度都の端へ行ってホウキを降りると、時間つぶしのために街へと繰り出した。