カエルと魔女の花嫁探し
 夜になり、セレネーは昼間見た少女ジーナの住処を見つけると、ホウキに乗って静かにその家へ向かう。

 水晶球に今のジーナの様子を映すと、狭い部屋に月上がりが差し込んでいる風景が見える。どうやら屋根裏の部屋で寝ているようだった。

「あら、好都合。呼び出しやすいわ……王子、準備はいい?」

 セレネーの囁きに、カエルはうなずく代わりに目配せをした。

 ただカエルにキスしろと迫ったところで、相手にされないのは分かっている。
 普通ではない事を押し通すには、普通ではない演出が必要。

 セレネーは屋根裏部屋の窓を見つけて前まで行くと、腰に挿していた杖を手に取り、先を窓へ向けた。

 きらきらと、光の粒が窓を通り抜けて部屋へと入っていく。
 始めはまばらに輝くだけだったが、次第に光の粒同士が互いの輝きを受けて、光を強めていった。

 バサッ! という音の後、「な、なにこれ……」という声が聞こえてくる。
 そして怯えながらも、光へ誘われるように窓を開けた。

「こんばんわ、お嬢さん」

 最初が肝心。セレネーは目を弧にして、朗らかに笑った。

 少女のエメラルド色の瞳が点になり、わずかに身を引いた。

「わ、私、夢でも見てるのかしら? ホウキに乗って空を飛ぶ人なんて――」

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