珈琲時間
12/18「見られた失態」
夏の学校での夏期講習。
『冷房完備の教室で、学校の先生が君を待っている!』
なんてプリントを見たときは ――― 学校の冷房なんて高が知れてる。どうせ夏期講習に行くなら、塾の方がいいじゃん ――― そう思ってたのに。

「あっれー? 雅哉も講習とってたんだっけ?」

……なのに、俺は夏休み1日目から学校に来ていた。

「ああ。学校の方が講習料安いし」
同じクラスの新藤や仁志を見つけて、近くに席を決めると、俺はバックをドサッと床に置いた。どれくらいの人数が集まるのかは知らないが、教室の半分が人で埋まっている。
「だよなー。俺も定期余ってるしさー、塾ったって、たった2週間程度で勉強がわかるようになんか、絶対なるわけないだろ? で、結局、上手く引きずられてその塾に通うようになったりするんだよなぁって思ってさ。学校のなら、そういうことないし」
うんうん。と頷く新藤に、床のバックを見ながら仁志は首を傾げる。
「でもさ、おまえ夏期講習なんかやってられっかって言ってなかったっけ? 部活の方は?」
3年生が引退して、部長なんてものになってしまった俺は、夏休みも関係なく毎日約3時間の部活をこなしてからこの夏期講習に来ている。上手い具合に講習と部活の時間がかぶらないようにローテーションが組まれているらしい。
「そうじゃん! 『せっかくの夏休みだってのに、部活と勉強でつぶしてたまるかっ!』って、俺らが申し込みしてるときに言ってたくせに」

(確かに、そんときはそう思ってたんだけどさ)

「……気が変わったんだよ」
「気が変わったって……ああ、なるほど」

はっきりとした理由を言わない俺に、2人はふーん、と意味ありげに顔を見合わせてニヤリと笑う。
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