魔王と王女の物語
四精霊までも味方につけている魔王――

彼らは生半可に力を貸したりしない。

試練を与え、それに打ち勝った者こそが彼らと契約を結ぶことができ、力を借りることができる。


「コー、今のって妖精さん?」


「んー、まあ妖精に近いけど。そんな感じでいいんじゃね」


説明するのがめんどくさいらしく、尊大ぶって四精霊の説明をしないあたりが逆に底知れない魔王の力を物語っていて、リロイとティアラは密かに顔を見合わせて強張った。


「で、女王に何を奪われた?」


「…感情だ。私は笑うこともできなければ泣くことも怒ることもできない。3年前からずっとだ」


「ま、あの女がやりそうなことだけどな」


「コハク様っ、あたし…戻りたくないですよ!絶対やだ!」


ベルルがコハクの回りを飛び回りながら猛抗議をして、ラスが瞳を輝かせながら両手に乗っけようと必死になって手を伸ばし、

魔王は決定権をラスに委ねて小さな王女を見下ろす。


「チビ、どうする?」


「妖精のお城でしょ?行ってみたい!」


「じゃー決まりな。ブルーストーン王国とは反対方向だけどいいのか?」


ラスが“行きたい”と言ったからには反対もできず、リロイが仕方なく頷いて白馬に乗った。


「僕はラスの言う通りにする」


「ブルーストーン…?お前たち、そこに行く途中だったのか?」


グラースが魔王の前に立つ。

…なかなかの美男美女のカップルに見えて、ラスはちょっとだけむっとしながらコハクの手を握った。


「ああ、俺はどうでもいいんだけど、あいつらがな」


「…呪いを解いてくれたら私が入れるようにしてやる。誼があるから大丈夫だ」


「じゃあ行くか。…チビ?どうした?」


ぎゅうっと力を込めて握ってきたラスの手を引き寄せて掌にキスをしながら問うと、唇を尖らせた。


「なんでもないもん」


「そうかあ?そんな顔してないけどなあ」


グラースが口笛を吹くと、どこからか一頭の黒褐色の馬が反対側の無事な森から走って来て、ひらりと跨った。


何もかもが様になっていて、ラスがぽっとなる。


魔王がむっとなって、ラスを馬車に押し込めた。

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