魔王と王女の物語
グリーンリバーが見えてきた時、コハクを除く一行はその異様さに声を上げた。


「コー、あれはなに?魔法なの?どうして魔法が使えてるの?」


「虹のヴェール…確かにこれは魔法だわ。一体どうなって…」


――巨大な円状の街、グリーンリバー。

その中心にはラスたちの位置からもやわらかいフォルムの、城の塔の天辺が見えていた。

毎日磨かれているかのように白く輝き、そして街をドーム状に包み込んでいるのは、虹色のヴェールだった。


「こんな街があったなんて知らなかった…」


リロイがぽつりと呟いて驚いていると、グラースが肩を竦めて街の出入り口に立っている者たちを指した。


「外から見たことはあるが、得体が知れないから中には入ったことがないんだ」


「え……、あっ、コー、あの人たち…魔物?」


コハクに抱っこされたラスが口をぱかっと開けながら出入り口を指した。

そこには、2mはあろうかという大柄な魔物が2匹、槍を持って立っていて、額からはものすごく長い角が生えていた。


「魔物に支配されているのか!ラスたちはじっとしてて。僕が…」


「まあ待てって」


コハクがのほほんと無防備に歩き出し、

この街について何か知っている風だったのでラスも警戒せずにさらに大きくなってゆく魔物たちを見上げていた。


――そしてコハクの姿を捉えた魔物2匹は…


口があんぐりと開いて、尖った牙をぞろりと見せた。


「あっ!?あなたは…」


「ここ入りたいんだけどオッケー?」


「!お、オッケーでございます!どうぞお入り下さいませ!」


威圧感満載で堂々と立っていた魔物2匹が急に慌てふためいて畏まりつつもおかしな言葉で鉄の門扉を開けると、

ティアラとリロイが顔を見合わせて、魔法剣の柄から手を離した。


「じゃー入るか。あっ、チビ、暴れんなって!」


「自分で歩きたいの!コー、下ろして!」


「やだね、俺は抱っこして入りたいの!」


じたばたともがくラスのお尻を撫でまくって魔物の横を通過した時――


「お帰りなさいませ、魔王様」


確かにコハクにそう言って、ラスが首をかしげた。
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