魔王と王女の物語
掌大の緑色のスライムをぽとりと影に落とすと、ラスは自分の影をぺちぺちと叩いた。


「どこに行ったの?私の服たちと同じとこ?」


「んーや、ちょっと違うけど、まあ同じようなもんだな。俺ちょっと捜してくるし」


ぷらぷらと木陰を伝いながら森の奥に消えて行き、ラスは魔物と戦っているリロイに視線を戻した。


真っ黒で堅そうな鱗を身に纏った恐竜もどきはあっという間にリロイから倒されて、

残る1匹が突然ラスに向かって走り出し、叫んだ。


「お前が1番美味そうだ!」


「きゃ…っ」


はじめて見た魔物から突進されて、恐怖で脚が竦んで動けない。

身体を丸めて顔を覆っていると…


ざくっ。

どさっ。


…何かが裂けるような音と倒れるような音がして顔を上げると…


背後から魔法剣を投げたリロイの一投は見事に魔物の心臓を貫いていて、ラスのすぐ傍で果てていた。


座りながら後ずさりして唇を震わせるラスの傍まで息を切らしながら駆けて、細くて小さな身体を抱きしめて魔物の骸から視界を覆った。


「大丈夫?もう怖くないからね」


「これが魔物…?喋ってたよ…私を食べるって…」


「ちょっと大きな蜥蜴だよ。ラスは僕が守るんだから絶対に食べられない。僕を信用して」


――金色のやわらかい瞳を見つめていると落ち着いてきて、ぎゅっと抱き着いた。


「全く…影はどこに?頼りないな」


「何か捜しに行っちゃったの。リロイかっこよかった。助けてくれてありがと」


「うん」


――見つめ合い、自然と唇を重ね合った。


ラスは信頼を込めて。


リロイは愛情を込めて。


「ん…っ」


「ラス、力を抜いて…」


…あの嵐の夜と…昨晩と同じキスをされて、否が応にも身体から力が抜けて、リロイにもたれかかった。


だんだん情熱的になってきて、

唇の音が鳴った時、思わずびくっと身体を揺らしながらラスが身体を起こす。


「ラス?」


「な、なんか今…変だった…。コー?コー、どこに居るの!?」


…未だ魔王にべったりのラスに、いらっとしながらマントを揺らして立ち上がった。
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