魔王と王女の物語
ティアラの態度の悪さが気になって、部屋を出たはいいもののそこからリロイとコハクも離れることができず、


コハクは影のある所でないと実体化できないので、リロイの影を踏んづけたまま腕を組み、イライラしていた。


「…限界来た。俺中に入る」


「勝手な行動はよせ!」


「へっ、お前の言うことなんか聞かねえよ」


――コハクが勝手に中に入ると…


ラスとティアラは手を繋ぎ合ってきゃっきゃと女子同士楽しそうにしていた。


だがコハクの姿が目に入ると途端に笑顔が引っ込み、ティアラが立ち上がる。


「またお迎えに上がります」


「あ、うん。またね」


一瞬ふわっとティアラが笑ったが、続いて入ってきた2人を見て、また固い表情に戻って部屋を出て行った。


「楽しそうにしてたな。何の話だ?」


「え?普段何して遊んでるのかとか」


コハクがラスの隣に腰かけ、リロイが正面に座り、にこにこしていた。


「で、お前は何して遊んでたって言ったんだ?」


「コーといつも遊んでます、って言ったよ」


だらりとソファに横になったコハクの身体にべったりと抱き着いて、ラスがくすくす笑う。


「リロイはいつも忙しかったし遊びに誘う雰囲気じゃなかったけど、コーはいつも一緒だったもんね」


「よくわかってんじゃん。あー気持ちいー」


「え、何が?」


「胸。ちっと大きくなったんじゃね?」


「!ほんと!?」


がばっと起き上がって馬乗りになり、その光景を大変満足しつつ眺めて、

ラスはドレスの胸元を思いきり開いて自分の胸を覗き込んだ。


「ら、ラス!?」


リロイからもラスの白い胸がよく見えて、心の狭い魔王が置時計を投げつける。


「見んな!」


「み……見てない!」


とか言いつつ顔は真っ赤。

ラスはそれに気付くはずもなく、胸元を正すと自分の胸を揉んだ。


「こうすると大きくなるかもってティアラが言ってたけど本当かなあ?」


「おお、そりゃ実践してみる価値ありだな。それは俺に任せろ!」


「影!絶対やるなよ、絶対許さないぞ!」


聞く耳持たず。
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