魔王と王女の物語
口論しているうちに緋色の騎士団がリロイと親睦を深めようと訪れて、

それを無下にも断れずに何度も心配げな視線でラスを見つめては、何度もコハクに念押しをする。


「影!ラスに変なことするなよ!」


「変なことって何だよ。俺頭悪いからわかんなーい」


完全に馬鹿にした態度でリロイの神経を逆撫でし、音を立ててドアが閉まると早速備え付けのバスルームに向かってバスタブにお湯を張り始めた。


「チビ、入るだろ?俺と一緒に!」


――部屋の中をコハクが動き回れるようにカーテンを引いているラスのことを撫でくり回したくなって、

室内が暗闇に満ちてランプを灯すと金の長い髪を頭の上に結い上げて留めたラスの腰を引き寄せてべったりと肩を抱いた。


「旅って楽しいね!これからティアラも一緒だし、馬車に乗れるかなあ?」


「広くすりゃいいんだろ?んなの朝飯前だっつーの」


「ほんと!?コーってほんとにすごい!」


「俺は超一流の魔法使いってわけよ」


自分で自分を絶賛誉めてラスの唇に1度ちゅっとキスをすると立ち上がり、その場でがばっとシャツを脱いだ。


「こ、コー!?」


「んあ?なんだよ、服着て風呂に入れってか?」


魔法使いのくせにやたら鍛えられていて、血管が浮き出て筋張った腕を見た時、ラスの顔に火が付いた。


「やっぱ一緒に入るのやめよっかな…」


「ふざけんな絶対一緒に入るからな。俺先に入ってるし、後で絶対来いよ。来なかったらチビのこと嫌いになってやる」


「!や、やだ、行くから!待ってて!」


――もちろん嫌いになる気など毛頭なく、初夜の夜の女子のように万遍なく身体を洗って鏡を見て、にやっと笑った。


「風呂でってのもいいな。早く来い来い」


ドキドキワクワクしながら待たされて30分…。

だんだんイライラしてきたコハクがラスを呼ぼうとした時――


「入るよー」


「おせえっつーの」


――あんなに恥ずかしがっていたのに…ラスは全裸だった。


「おおぉっ!チビ、お前もその気満々なのか?」


「え、何を?コー、擦って」


「俺のも擦って」


またラスが首を傾げた。
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