愛されたかった悪女

見守る人

「僕のところへ行こう」


ふんわりと髪にジョンの唇を感じたあと、抱きしめられていた腕が外され、手を握られる。


「ジョン……」


「今は何も言わないでくれ」


ジョンは戸惑う私を引っ張るように出口に向かった。


******


ジョンの住まいに入るのは初めてだった。


彼のアパートメントはソーホー地区の倉庫のような建物だった。


昔は移民者や低賃金労働者が多くいた場所だけど、今は高所得者が住んでいる場所。


最近引越しした部屋は、まだ片付けられておらず、隅に段ボール箱が重ねられている。


唯一この部屋で使えるものと言ったら、中央に置かれたベッドだけかもしれない。



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