愛されたかった悪女
何か言って欲しかった。


やっと言ってくれた言葉に愕然となる。


「君には愛想がつきた」


彼はそう言った。


目の前が真っ暗になった。


心の中にどす黒いものが渦巻いて、ハヤトを追いかけた。


あの子はハヤトの腕の中でのうのうと抱かれている。


怒りの矛先があの子に向かうのを止められなかった。


玄関を出て、ハヤトがあの子を助手席に座らせる姿が目に入る。


その時、あの子が私の方を窺うように見た。


「あなたのせいよ!」


日本語で叫び、車に近づく。


叫んでも私の気持ちはおさまらない。


あの子の唯一のドレスに似せてドレスを作らせたのに。


似たドレスを着た私とあの子、どっちが魅力的なのかを。


私の顔が悔しさで歪む。


< 34 / 116 >

この作品をシェア

pagetop