愛されたかった悪女
私は運転席の窓ガラスをこぶしで乱暴に叩いた。


大好きなハヤトの瞳が私に動くことはなかった。


ハヤトは気にもせず車を発進させた。


私の手がむなしく空を切った。



******



ハヤトの言葉は私を傷つけた。


だけど、傷つけられてもあきらめられない。


ジョンによると、あの子は体調を崩して寝込んでいるらしい。


紫藤不動産のドクターが往診に毎日行っているらしい。


プールに落ちて風邪を引いたみたいね。


だけど、風邪ぐらいでドクターが毎日行くなんて……。


他の病気でもあるのかしら?それにしてもハヤトの配慮はあの子を溺愛しすぎている。


これから撮影だと言うのに、いつの間にか私は下唇を噛んでいた。



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