愛されたかった悪女
彼女の聞く声は高く、上ずっていた。


だから私は言ってやった。


「彼を取り戻したいからに決まっているじゃない 政略結婚の為に私が捨てられた 世間は私に同情するわよね?彼は非難を浴びるでしょう 簡単に私を捨てたのだから」


「ひどいっ!なんて酷い事を!」


「酷いのは彼よ 私は使われたティッシュの様に捨てられたよ? 貴方みたいな何の魅力もない女にとられて」


私はだんだんと声を荒げていった。


「捨てられた……?結婚する前に別れたって……」


「ええ、そうよ 私は愛する気持ちを隠してハヤトと付き合った 私の愛を少しでも見せれば彼は去ってしまうと思って、身体だけの付き合いのフリをしていたわ でも別れるにはもったいない人よ 彼ほどの人はいない これからも現れない 隼人を手放すわけにはいかないのよ」


ハヤトを愛している……けれど、意地になっている自分がいた。執着心なのかもしれない。


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