魔女の悪戯
「忠純殿、凄いな!
また矢吹様を打ち負かすとは!!」
勝負を見守っていた小姓達がレオに駆け寄り、賞賛の声をかける。
タダスミドノ?
ヤブキサマ?
誰だそれは、と言わんばかりに眉間に皺を寄せるが、小姓達は尚もニコニコと褒めてくるので、悪い気はしない。
眉間に寄った皺も徐々に取れていき、
「あ、ありがとう…」
とだけ呟いた。
負けたおっさんこと矢吹は、悔しそうにしていたが、そこは剣術指南役らしく
「どうやら、姫にかまけて腕を落とした訳でもなかったようだな。
これからも精進を怠るでないぞ。」
とだけ言い残して去って行った。
矢吹の姿が見えなくなると、それまで必死に堪えていた小姓達が笑い出す。
「矢吹様、これで忠純殿に五連敗だ!」
「見たか、あの悔しそうな顔!」
「姫がお輿入れしたら、次の剣術指南役は忠純殿に決定だな!」
楽しそうに笑い声を上げながらレオをバシバシと叩く小姓達。
レオは苦笑を浮かべるしかなかった。