魔女の悪戯
あのレオナルドがロナウド相手に苦戦している。
それをさも珍しいものを見るかのように、騎士達はなおも決着の着かない勝負を見学する。
勝負はとうに15分を越えていて、二人とも徐々に息が上がってきた。
勝てる、と思っていたロナウドは、なかなか勝負が着かないことに苛立ちを覚え始め、
重い一撃を繰り出すと、それを受け流されるのを予測していたように、さっと一度後ろに引いて忠純と間合いを取った。
──何か来る!
直感的にそれを感じ取った 忠純は、軽く目を閉じ、深く息を吐いた。
右手に握られた剣は鞘へ。
ロナウドはその行動に眉を顰たが、これで終わりだ、と今までで一番早く重い攻撃をした!
忠純はその一瞬に、鞘から剣を抜くと、ロナウドの攻撃を紙一重でかわして、その切っ先をロナウドの喉元でピタリと止めた!
訓練場内に、長い長い沈黙が流れる。
ロナウドは、しばらく自分の身に何が起こったのかわからずにいた。
忠純が喉元で止めた剣を下げると、ようやく自らの負けを悟って剣を納めた。
剣を鞘にしまって、二人は向き合い、一礼する。
そこでやっと、訓練場内に大歓声が沸き上がった。