魔女の悪戯

剣を鞘に戻して、居合い講座中に教えてもらった訓練用の模造刀の置き場に向かおうとすると、急に騒がしくなった。


──何事だ?


忠純は疑問の表情を浮かべる。


そして、訓練場の扉が開かれて、扉の前には金髪緑眼の青年。


騎士達はその姿を確認すると、全員その場にひざまづいた。


忠純もそれにあわせてひざまづく。


──何者だ。


この者達の主君か?


「これは、ラウロ王子。
何のご用でしょうか。」


隊長クラスの騎士が尋ねる。


──皇子?


ここの者達の主君は、この国の帝(ミカド)か?


忠純は一歩引いた目線で物事を見るようになっていた。


「レオナルドはいるか。」


──なっ!?


予想外の言葉に、つい硬直する。


忠純は居合い講座中に散々レオナルドと呼ばれたため、自分が呼ばれたことは分かったものの、


まさかの王子の御所望に一気に緊張する。


「は、只今。
レオナルド!!」


隊長に名を呼ばれ、そのままの体勢で返事をする。


「レオナルド、すまないが一緒に来てくれ。
ついでに話したい事もある。」


「ははっ。」


軽く頭を下げてから、立ち上がって扉の方へ行く。


──皇子(ミコ)が自ら呼びに来るような男なのか、この身体は。


身体の持ち主ではあるものの、まだ会ったこともないレオナルドに、尊敬と感心の念がわく。


訓練場から外に出ると、クリスティア城の本城が目の前にあった。


石造りの白亜の城。


天高くそびえる、無数の塔。


岩佐城にも、物見櫓くらいはあったが、規模がまるで違う。


忠純の時代は、まだ織田信長が安土城を築く前なので、大規模な天守閣はまだどこの城にもなく、


自分の半歩前を歩くラウロがこんな大国の皇子であると思うと、恐ろしかった。


そして、その皇子が直々に呼びに来る程の、レオナルドも…。


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