魔女の悪戯
「そなたは覚えておるか。
昔、まだそなたが元服したばかりの頃、父上の遣いで尾張に行った時に、私に南蛮ものの時計を買って来てくれたのを。」
「ええ、もちろんでございます。」
レオは忠純の昔なんて一切知らないため、姫の話に適当に合わせて返事をする。
柚姫は嬉しそうに笑った。
「まだ禄も少なかったというに、私の為に買ってくれた…。
今でも大切に飾っておるぞ。」
「光栄なことでございます。」
レオがそう言うと、侍女を呼び、柚姫は何かをこっそり伝えた。
侍女は頭を下げて、部屋を後にする。
すぐに戻ってきた侍女は、何かを持っている。
その何かをレオの前に置くと、また下がっていった。
「それは、私からのほんの礼じゃ。
受け取ってたも。」
レオは目の前に置かれたものをじっと見る。
それは、漆塗り金蒔絵の鏡だった。
美しい松の絵と、岩佐城主風見家の家紋。
漆塗りを初めて見たレオにも、素晴らしい逸品だとすぐに分かった。