魔女の悪戯

「ああ、暇だねえ。」


ここは魔女の城の、魔女の部屋。


薄暗いその部屋には、蝋燭立てがひとつと、アンティーク調の机に、大きな坐り心地抜群の革製の椅子。


そして、世界のありとあらゆるものを映し出している、数え切れないほどの鏡が部屋を埋め尽くすかのように浮いていた。


椅子に踏ん反り返って高価そうな机に真っ赤なハイヒールを履いた細い足を乗せて、魔女は映画やドラマを見るかのように鏡に映し出された世界を見る。


世界のありとあらゆるものを映し出しているとはいえ、世界は同じことの繰り返しのようで。


子供が産まれて、男と女が出会って恋に落ちて。


また子供が産まれての繰り返し。


中には悲劇的な運命を辿ったり、波瀾万丈な人生の末に栄華を掴むこともあったりするが、そんなのはごく一部。


同じようなものを毎日観察するだけの日々に、魔女は飽き飽きしていた。


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