魔女の悪戯
そしてついに、ラミア王女を乗せた馬車はカルボーロ城へ到着した。
レオたち騎士は、さっさと馬から降り、ひざまずく。
まず、馬車からカイル王子が降り、その手を借りてラミア王女が降りる。
馬車はその場を去り、ラミア王女は騎士たちを見渡した。
クリスティアの騎士たちは、役目をカルボーロの騎士たちに託し、帰国するために再び馬に跨がった。
カルボーロの騎士や王族は、恭しくそれを見送る…はずだったのだが。
「レオ!
レオーッ!!」
ラミア王女が、いきなり大声でレオを呼んだ。
「レオナルドーッ!!」
「は。」
レオは驚き半分、呆れ半分で馬から降り、前に進み出た。
「貴方、なに国に帰ろうとしてるのよ!?」
「…は?」
「貴方は私のナイトでしょう!?
私がクリスティアにいればクリスティアの騎士だけど、カルボーロにいるなら貴方はカルボーロの騎士なのよ!!」
我が儘王女、炸裂。
皆が唖然とするなか、レオとカイル王子はラミア王女に言い返した。
「しかし、私はクリスティアに忠誠を誓った身。
やすやすと国を出る訳には…。
それに、私がいても、お邪魔になりましょう。
カイル王子様がとても恐ろしいお顔で私を見ておりますよ。」
「そうだよ!
お前は、クリスティアに帰れ!」
「駄目よ!!
レオが居ないなら、私もクリスティアに帰るわ!
だって、私のナイトはレオだけだもの!」
ラミア王女が、レオの腕を抱く。
レオは苦笑するしかない。
「なっ…!」
カイル王子は口をパクパクさせ、ラミア王女とレオを見た。
「カイル様、レオは私のナイトよ。
お父様とカルボーロ王にお願いしするわ。
いいかしら?」
そんなラミア王女を、カイル王子は最早あきらめたようで
「……わかったよ。」
とだけ言い、レオとラミア王女を引き離した。
「だって、レオ!
私のナイトは、貴方一人よ!」
ラミア王女の満面の笑顔に、レオも笑顔に。
──私の仕える姫も、貴女一人です。
いつまでも…。