spiral
「……あ」
見つけたって思った。あからさまな変化の最初。
『なに、コイツ。ナマイキ』
それだけ書いてその日を終わらせた日があった。ちょっとずつ内容が変化してく。
『しゃべるとうるさい。寝れない。どうしてあたしの時間がないの。頑張って大きくしても、いいことないじゃない』
『テレビの前で揺れながら楽しそうにしてんじゃないわよ。こっちは楽しくない』
『いつまでオムツ買えばいいの?子供なんかお金かかるだけじゃん』
『おもちゃのピアノなんか、買ってくるなよな。お金もないのに。しかも、うるさい。飽きちゃえばいいのに、いつまでも弾いてるし』
そして、
『あたしって、誰のために生きてるのよ。頑張ってても、誰もほめてくれない。産んで損した』
自問自答。そして、
『汚い。子供なんか、汚いだけじゃん』
明らかな拒絶の兆し。
『風邪でも引けばいいのに。やっぱりあたしにはママになるなんて出来ない』
チリチリと胃が痛くなる。
『なんでこんなに元気なの?こいつ』
『幸せって、どこにもないじゃん。他に男作ろうかな』
ママの表情が見えそう。
書かれている言葉は哀しい言葉が溢れているのに、最初の方のページになかったノートのちょっとした変化。
紙が、ところどころよれてて、もしかしてと思った。
(ママ……泣きながら書いてた?)
文字も滲んでるところが目立つ。そう思いたいだけかもしれないけど、そんな気がしたんだ。
もう一枚、と捲った時、
『笑い方がわからない』
たったそれだけ書かれて、その上をクシャクシャと線が走ってた。
線で消し始めた、最初の場所。
『育児って、頑張ってたら何かいいことあるの?』
見えないものに感じる疑問と焦り。
『変わらない毎日。もう、疲れた。子供がいたって、愛なんかどこにもない』
寂しい声。
『あの女と同じことをしてるんだと思うと、許される気がする。この子をつねると、気持ちがスッとする』
ドクンと胸が鳴った。
ママがあたしへの意思表示をした最初だ、きっと。兆しじゃなく、これはハッキリとした拒絶だ。
『許されなくていい。この子が嫌いだっていえる。この子がいなきゃ、あたしは幸せだったのに』
そして、言葉も……あたしを拒んでる。
哀れんじゃいけないと思うのに、ママを哀しく思う。
ママはあたしが大きくなる前から、あたしを拒んでたんだ。
アキのことがある、ずっと前から。
あたしっていう存在を見たくなくなってたんだ。
あたしは邪魔だったんだ。ママは、幸せじゃなかった。