spiral
「なにかあった?」
いつもなら、何もないよと返すだけのあたし。それが、心の壁だよね。
「……うん。あった。聞いてってお願いしたら、聞いてくれるかな」
すこしだけ勇気を出す。
「もちろん」
そういってから、涙の跡が残る目尻にキスをしてくれる。
ノートを抱きしめ、ママを知ることが出来たことに感謝した。やっと近づけたって。
今の自分も悩んでいる。このノートの中のママが、一人で悩んでいたことと同じことで。
「あのね、あたしね」
上手く言えなくてもいいよと、凌平さんはいつも言ってくれる。焦らせない。
「思ってることがあって」
部屋の片隅、コーヒーメーカーからいい香りがしてきた。
「あれ飲みながら話そうか」
ミルクを多めにして、まるであの日のお父さんが淹れてくれたカフェオレみたいな味。
それを口にして、あたしは自分の気持ちを紐解いていく。
結局のところ、ママもあたしも変わらない。
ただの人間で、寂しがりやで、不器用で。
けど、自分の周りを振り返ることが出来るかどうかだけが違ってた。
もしも、の話。
ママがあたしに触れることを恐れていて、あんなことをしたんだとしたら。
そうだったらと思ったことは、こんなこと。
ママがあたしを怖がって突き放そうとしても、あたしはママを離さない。
似た者同士だからわかりあえるよって言いたいな。親子なんだよって。
またママがあたしを突き放すようなことがあっても、あたしはママに手を差し出そうと思う。
それは驕りなんかじゃなく、愛情という名のぬくもり。
いつまでもその指先に触れるものがなくたって、あたしがみんなの手をつかんだ時のように、いつかの勇気を待とうって……。
みんなが待っててくれたみたいに、どんなに時間が長くかかっても、変わらずに好きでいよう。
変わらないということ。
それは、とても安心できることだって知ってるから。
ママが教えてくれた一つのこと。それが真実なんだ。
end
