俺はその時、どう行動するか。
俺は閉じていた瞳をゆっくりと開けた。





マリアベールの向こうの澪も、俺を見つめていた。






その瞳に見つめられ


「……っ」


俺は思わず言葉につまった。





それは13年前のあの日から、何も変わらない、俺だけを真っ直ぐ見つめる清んだ澪の瞳だった。







今の俺には―――…



この目の前の美しい女性を愛す資格なんてないと思ってしまった。








世の中には、黙っていた方が相手のためになる嘘もある。


真実を告げるのは自分が楽になるだけの逃げ道で、

相手を思えばこその嘘だってある。







だけど……




こんなに真っ直ぐな澪に…

俺は死ぬまで昨日のことを、他の女性を愛してしまった事実を隠し通す自信がない。




今の俺なんかが澪を手に入れていいはずがないと気付いてしまった…。




< 169 / 224 >

この作品をシェア

pagetop