俺はその時、どう行動するか。
「ちょ…ちょっと歩きにくいね」
「あはは…想像以上に大変ですね~!」
笑顔がひきつる俺に対して、綾音は息を切らしながらもなんだか楽しそうだ。
除雪はされてあるけれど道には雪が残り、スーツケースを引いて歩くのはなかなか至難の技だった。
ズボズボと歩くたびに深い足跡が残り、靴の中は雪まみれ。
ロングブーツの綾音はまだしも俺の足は水浸しになっていた。
俺は修行に耐える僧侶のように目的地を目指しただひたすら歩き続けた。
なんとかラーメン屋に着いた時には時刻は1:40を過ぎていた。
「や…やっと着いた…」
俺と綾音はラーメン屋のカウンター席に並んで座る。
店の中は暖房が効いていて、芯から冷えきった身体を暖めてくれる。
美味しいと評判らしいラーメン屋の狭い店内は
不便な立地にも関わらず満員で、並ばず入れたのはラッキーなんだと思った。
「はぁ…なんか3日ぶりに遭難から救助された気分」
「ふふふ…それはラーメンの美味しさも増しそうですね」
俺たちはラーメン屋の大将に看板メニューの絶品バターラーメンを注文した。