SWeeT†YeN

「そうよ、お父様。柏原は、強いもの」


それに、誰より私を大切に愛してくれている。


バツの悪そうな顔した執事に、パチっとウインクを決めてみたかったのに、なぜか両目が閉じてしまう。

難しいのね……
ウインクって……




「お嬢様……顔面神経麻痺の症状が出ております」


「失礼ね! ウインクしようとしたのよ!」


「いいえ、少し夜風にあたり……麻痺した神経と溶けた脳を冷したほうがいい」


「失敬ねっ!」



「旦那様、奥様
お嬢様と話をして参ります」


柏原は両親に一礼すると、ガツと私の腕を掴み急ぎ足でその場を離れる。


「痛いわよ! 柏原」

「黙って着いて来てください。まったく世話が焼けるお嬢様だ」


そのまま庭園にやってきた。


外は、もうすっかり暗闇に包まれている。

エントランスと同じように、いくつかのガス灯が儚く光っている庭園。


山の家とは、正反対の手入れされた木々と花たちが迎えてくれる。




< 548 / 554 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop