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「そうよ、お父様。柏原は、強いもの」
それに、誰より私を大切に愛してくれている。
バツの悪そうな顔した執事に、パチっとウインクを決めてみたかったのに、なぜか両目が閉じてしまう。
難しいのね……
ウインクって……
「お嬢様……顔面神経麻痺の症状が出ております」
「失礼ね! ウインクしようとしたのよ!」
「いいえ、少し夜風にあたり……麻痺した神経と溶けた脳を冷したほうがいい」
「失敬ねっ!」
「旦那様、奥様
お嬢様と話をして参ります」
柏原は両親に一礼すると、ガツと私の腕を掴み急ぎ足でその場を離れる。
「痛いわよ! 柏原」
「黙って着いて来てください。まったく世話が焼けるお嬢様だ」
そのまま庭園にやってきた。
外は、もうすっかり暗闇に包まれている。
エントランスと同じように、いくつかのガス灯が儚く光っている庭園。
山の家とは、正反対の手入れされた木々と花たちが迎えてくれる。