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良い香りの漂うハーブ園、その隣には白いアーチがかけられたバラ園がある。


ガーデンチェアが置かれている場所は、春と秋にだけ私がティータイムを楽しむ場所だけど、今夜は寒くてお茶をしてたら風邪をひいてしまいそうだ。


「柏原、お茶は要らないわ!」


「ご安心ください。そのような呑気なものを準備する気分にはなれません」



「じゃあ、何よ! まさか婚約が嫌だなんて言わないわよね! 私の産まれたままの姿みたんだから、責任とりなさいよっ!」

「とりましょう。私の命と魂をかけて、全身全霊で責任をとる所存にございます」



柏原がぐらりと傾き、額が私の肩にもたれる。


「どうしたの?」


執事の背中に手を置いた。


また充電キレかしら?

黒髪が邪魔で、その表情がまったく見えないのが残念だ。

柏原は、私を力強く抱き締めた。




「お嬢様を、愛しています……」


「知ってるわ。もう何回も聞いたもの……私も愛してるわ。柏原」


「っ……お嬢様…………」



「柏原?」



柏原は、何かを必死に噛み締めるように耐えているようだ……

肩にグッと力が入ると、小さく震えた。



婚約は、突然すぎたかしら?

愛されてるのは本当だと思うけど

私と柏原は『お嬢様と執事』として余りに長年過ごしてきたから……


私は、柏原と婚約しようと決意したけど

柏原には迷惑な話だったかしら?


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