BLack†NOBLE


『どこがだよ。鬼畜野郎と変態マゾ女の馴れ初めなんかきいた俺がバカだった……もういいから寝ろ』


『突き落とさない?』


『まだローザのマンションの住所を聞いていない』


 ため息を吐き、ハンドルを操作しながらクロードから借りたジャケットを脱ぐ。

 見ているだけで寒そうなアリシアに、それを掛けてやった。



『やっぱ兄弟だね。二人とも優しい……』

  

 俺は何も答えられなかった。アリシアはそのジャケットを大切そうに自分の体に巻き付け、スゥと大きく息を吸い込むと……そのまま夢の世界に旅立った。





 昔の蔵人は確かに優しい面もあった。そして、俺の憧れで自慢の兄だった。


 歳は二つしか離れていないのに、俺は何一つ奴に勝てたことがない。

 スポーツに勉強、蔵人は何をやらせても完璧だ。

 母親の誕生日に俺が花束を用意すれば、蔵人はさらに大きな花束を用意していた。

 サッカーをやらせればスタープレイヤーともてはやされて、一流の国立大を首席で卒業している。


 アイツは、そういう奴なんだ。




 
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