BLack†NOBLE

 マフィアを恐いと思った事など一度もない。

 マフィアを憎いと思った事は数えきれない。



 奴等は、俺たち兄弟のことを徹底的に知っていた。


 家は廃墟のように焼かれ、俺たちには何も残されなかった。


 大切なモノをごく一部に抑えていた俺たちの生活はそこで全てを失う。



 そこから先の兄の消息は知らない。


 探したが見つからなかったので、殺されたのかもしれないと考えた。でも、あの兄が殺されるなんてことは信じられない気持ちもあった。


 蔵人が道を踏み外していなければ

 父親と上手くいっていれば

 俺が止めていれば……




 何度も何度も自問自答を繰り返し、結果、数日前まで祖国に足を踏み入れることすらしなかった。


 また俺は、この国で大切なものを失うのか……


 だけど、彼女は絶対に死なせたりしない。


 絶対に……



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