BLack†NOBLE
腕を振り、蔵人の手を力いっぱい払い除ける。
「全部お前のせいだろ!」
こめかみの血管が切れそうなくらいに怒鳴る。腹の底から怒りが沸いてくる……
両親が殺されたことも、家を焼かれたことも、楽しい婚約旅行を邪魔され、彼女と別れろと命令されて、変な女と二度も銃撃されて……
全部蔵人の責任だ。蔵人が悪い。
「疫病神……俺が殺されるまでつきまとうつもりか? それとも俺が死ねば満足か?」
子供みたいに罵ることしかできない。悔しいが目頭が熱くなってきた。
俺はこんな事に慣れてるわけじゃない、割れたガラスを蹴散らしながら店の外に出た。
今さらパトカーが数台やってきたが、外は戦場のような有り様だ。野次馬が遠巻きにこっちを見ている。
煉瓦には抉られた跡が、はっきりと残り、剥がれたコンクリが、道に散乱している。
こんな光景は見たこともないし、背筋が凍り付く程の恐怖を感じている。俺は一般人だ。ただの執事だ。こんな経験二度としたくない。