BLack†NOBLE


 割れたガラスの上で下唇を噛み締め、右手の拳を強く握り締める。


 茉莉果お嬢様にスフォリアテッレが届けられる。彼女はあの屋敷にまだ閉じ込められている。



 彼女は、蔵人の贈り物としてそれを受け取り、そして何を思うのだろう?
 「美味しそう」と愛らしい頬を緩ませるのだろうか?



『瑠威、ここは店仕舞いするようだ。外に出て車に乗れ』


 蔵人の冷たい手が、俺の肩を掴む。怪我をしていない方の肩だ。



「煩い……俺に触るな! 彼女は無事なんだろうな? 返せよ! 俺の大事な女だ、傷つけたらお前も殺す」
< 143 / 509 >

この作品をシェア

pagetop