BLack†NOBLE
『蔵人と話がしたい』
護衛を鋭い目で睨み付ける。だけど、奴等は全く動じず咳払いを一つした。
『瑠威様……お言葉ですが、我々はアナタと掟を交わしているわけではない。クロード様との契りを最も大切にしております。アナタの命令を聞く義務は、我々には無い』
奴のいうことは正しい……俺はただの執事だ。
ただの執事が、武装した丁寧な対応のマフィア相手に「おまえたちのボスに会わせろ」と喚いたって、まかり通る世界じゃない。
それでも護衛を鋭く睨み付ける。今の、俺には無駄に喚くことしかできない。
『無駄な争いは、したくないだろ? 俺を殺せるか? 蔵人の弟だぞ』
『わかりました……』
護衛は咳払いをすると、遠慮がちに一枚の扉をノックする。
『クロード様、瑠威様から話があるそうなのですが、いかがいたしましょうか?』