BLack†NOBLE


『瑠威、待ってよ』


 アリシアを無視して、蔵人を捜す。船内は無駄に豪勢だ。


 以前、西原造船の造ったクルーザーに乗ったことがある。その船内も、ブルーを基調とした上品な色合いが、この船と同じ雰囲気だった。


 デッキから階段を降りると部屋が四つに別れている広いラウンジ。

 そこは丸い壁で囲まれていて、扉が四ヶ所にある。


 ここにも重々しい装備の護衛が二人。



『蔵人と話がしたい』


『瑠威様の部屋は、こちらを使うようにと聞いていますが』


 デカイ図体だけに、どんな野蛮な口をきくのかと訝っていたが、教育は行き届いているようだ。

 一人が別の部屋の扉を開く。



『アリシア様の部屋は、あちらです』


『やった! ここ確か、寝室つきだよね? ってことはクロードが後で来てくれるってことかもしれない! シャワー浴びて待ってるように言ってた?』


 護衛は首を傾げた。


 アリシアは浮かれてカンツォーネを歌いながら、開かれた扉の中に消えた。丁寧に扉を閉じると軽く会釈をする護衛。教育ができているじゃないか。


 俺のことは散々殴ったくせに、変なとこだけ律儀な奴らだ。



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