BLack†NOBLE
『蔵人と話をさせろ』


 『はあ……困りました』レイジの盛大なため息と、『俺は止めたんですよ?』と護衛の言い訳が同時に合わさる。



『瑠威様……我々は少しばかり厄介な問題に直面しております。

 クロード様はあなたの兄ですが、彼はイタリア全土に散るファミリーのボスでもある。我々の命は全てクロード様の采配にかかっている。

 その意味をご理解いただけたのなら、パレルモまでの船旅を他で楽しんではくださいませんか?』



『ならば余計に、"クロード"という男と話がしたい』


『瑠威を通せ、レイジ』部屋の奥から綺麗なイタリア語が聞こえた。 その声は少し疲れているようだ。


 背の高いレイジを下から睨み付けると、わざと肩をぶつけて部屋に入る。


 すぐ右手に、ユニットバスがあり通路を数歩進むとタブルベットが一つ。

 最奥には豪華なソファーセットが一組。


 蔵人は足を組み、深くソファーに腰をかけて天井を見上げて紫煙を吐き出した。

 着ていたジャケットはソファーの背もたれにかけられ、黒いシャツは胸元が大きく開かれている。


 木のテーブルの上には、女性のブーツの形をしたイタリア地図が拡げられていた。


 小さな端末の携帯電話をその上に置くと、目の前の一人掛けのソファーを手で示した。

 座れという意味だろう。



< 154 / 509 >

この作品をシェア

pagetop