BLack†NOBLE


 メルフィスの組織が、マフィアとしての拡大すればするほど、その問題は重くのしかかる。

 自分の組織構成員の中から後継者を選ぶべきか……それとも混乱を避けるべく外部者を一から後継者として教育すべきかという悩みが付きまとう。

 通常ならば、組織内の信用を置けるものを選ぶのかもしれないが……『後継者』としての教育は、ゼロからスタートさせることが、とても重要だと言っていた。


 メルフィスの理想は高い。と、ローザは誇らしげに、蔵人を見つめた。






『マフィアにとって後継者を決めるということは、その頂点に立つ者を決めるという意味だけじゃないの。

 それは、頂点に立っていた者の敗退を意味する。死をもってのみ、その職務を新たな者に渡す。それが彼等の世界のルールなのよ』



 ローザはそう言うと、暫く沈黙した。

 彼女もメルフィスを愛していたのだろう……薬指に光るシンプルな指輪を見つめながら静かな沈黙だった。



 メルフィスには、コッグとグレコという有能なアンダーボスがいた。二人は若く頭が良く、そして貪欲だ。死を恐れず、どんな修羅場に直面してもメルフィスを支え続けた。


 だが、その貪欲さがメルフィスの心配の種でもあり……二人の対立は組織分裂の危険因子になる。



 メルフィスの描いた理想的な統治には、欲は必要ではない。


『冷静さ』『賢さ』それから『人々に愛される魅力』
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