BLack†NOBLE



 先代のメルフィスは、シチリアを拠点とする『暗黒街の帝王』と呼ばれるほど巨大な組織を作りあげた人物だ。マフィアとしてだけではなく、企業家としても有名で、広くは政治家、銀行家、不動産、貿易などの世界にも精通する程だった。


 それは、この家の至る所に飾られた写真を見れば一目両全。政治家、銀行家、投資家、資産家。イタリアじゃその顔を知らないものはいないというくらい、有名な顔ぶれとの写真がたくさん飾られている。



 だがメルフィスには、子供ができなかったそうだ。世襲と家族を重んじるマフィアの世界。年を重ねてきたメルフィスには「後継者」という言葉は頭を悩ます問題だったらしい……


 ローザは『私がこんな体じゃなかったら、子供ができていたのかもしれない……』と言っていた。マフィアのボスならば、妾をつくる事もできただろう。それをしなかったという理由は、奴はローザを本気で愛していたからだろう。


 何も恥じる事じゃない。自然の成り行きだ。仕方のないことだと思う。





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