BLack†NOBLE
『持って生まれた器が違います。あなたたちご兄弟のように、上に立つ選ばれし人間と、私のように下で働く人間とでは……昨夜、思い知りました。
私は、クロード様が回復するまであなたの下で働きます』
筋肉が強ばり、疲労困憊して車に揺られる。車は、細い路地を縫うように進んでいく。
蔵人の血で汚れた衣服は、乾きごわついている。気持ち悪いとは思わなかった。どうでもよかった。
『クロード様と出逢った時。こんな若い男が、メルフィスのボスになれるはずがないと思いました』
レイジは、俺の返答を待たずに勝手に喋り続ける。
『若く美しいあの方に、私はいくつも不安を抱えていました。マフィアは、美しくいる事など必要がない。強さと残忍さだけが全てだと。
けれども、クロード様は我々闇の世界で生きてきた者を嘲笑うかのように……もっと深く甚大で賢く我々を支配した。
クロード様は、どんな残忍な男たちもたちまち虜にする魅力を持っている。それが絶対的な忠誠心になる。
見た目は、ただの顔の綺麗な東洋人。その彼が、分裂しかけていたファミリーをたった数日で一つに結束させてしまったのです。
コッグとグレコに味方する者は、ごく少数でした』