BLack†NOBLE
────沈み込む程、柔らかなスプリング。清潔な白いシーツ。花の香りが心地よい。
自分の固く握られている拳が煩わしい。
部屋は、仄かな灯りに照らされている。夜になっていた。
うつ伏せに倒れ、深く眠りについてしまっていたようだ。
彼女は……?
「茉莉果っ」
腕の中に彼女を抱き締めていたはずなのに、ベッドには俺一人が取り残されていた。
「ギャッ? 柏原、突然起きないでよ。ビックリしたわ」
部屋はランプの灯りがついていて、彼女はソファーに座って両手を胸に当てて驚いた顔で俺を睨み付ける。
よかった…… 同じ部屋にいたか。
「柏原ってば、やっと抱き合えたと思ったのにすぐに寝ちゃうんだもの! もう夜よ!」
彼女はプウと頬を膨らまし、横を向く。栗色の髪は綺麗にとかされて、流れるようにウェーブしている。
淡いベージュのシフォンワンピースに見覚えはない。おそらく蔵人が買い与えたものだろう。
パフスリーブが良く似合う。彼女に似合う洋服は、俺が一番よく知っているはずだ。
無性に嫉妬心が全身を襲い埋め尽くす。